たまにはまともな仕事話。在宅医療介護連携システムのこと。

高齢化、医師不足、医療費の高騰、自宅で最期を迎えたいという患者さんのニーズ…。
さまざまな社会事情が「在宅医療の推進」を要請している。

そんな中、弊社でも在宅支援システムを作るきっかけがあり、しかも慣れたFileMaker Proで作ることになりました(2年ほど前のこと)。

当初は、FileMaker Proクライアントとブラウザで使えるようにという要望だったのでPHPカスタムWebも作りましたが、結局20種類もある帳票を一つ一つPHPで作る「労」と、それらがとの程度ユーザーに歓迎され実際に使われるのかという「功」の兼ね合いもあり、最終的にはWebは中止となりFileMaker ProとFileMaker GOだけで使える仕組みとなりました。

患者基本情報、簡易な医師カルテ、掲示板や各種のカレンダー機能、紹介状、主治医意見書などのきれいな帳票が作成できメールやInternetFaxができるとか、処方箋の薬情報がQRコードに出力されiPhone、iPadのリーダーで読み取れるようにするなど、さまざまな要請にこたえる形で徐々に機能が充実してきています。

今年のモダンホスピタルショー(7月17日~19日、東京)でその一部をご紹介することになっていますが、今日はその開発背景を少しまとめておきたいと思います。

前置きが大変長くなりましたが。

この開発は、とある医師会の地域連携プロジェクトから始まりました。

プロジェクトでは開業医や歯科医、薬剤師会、介護関係者などが20人ほど集まり月1回2時間ほどのミーティングが行われました。

システムを利用するユーザーは、以下のように想定されていました。

  • 主治医
  • 歯科医
  • 看護師
  • 薬剤師
  • 介護担当者(ケアマネ)
  • 紹介先の中核病院

ようするに、地域の医療を支えるほとんど全ての関係者が安全に使える「患者情報共有システム」という、幅広くあいまいなスタートだったので、関係者の多様な意見をまとめて一つの方向性を作っていくことが一番大変なことでした。
力関係からいうと主治医が一番強く声も大きいのですが、そうしたドクター連の顔色をうかがいながらもそれぞれの意見をさりげなく主張して決して譲らない人も多く、そんな微妙なやり取りが結構スリリングで面白かったりして…。

こうしたプロジェクト会議を5回ほど行い、スタートから半年ほど「ああでもない、こうでもない」という議論は続きました。
したがって、「要件が確定されないと作業には一切着手できないよ!」という「立派なSEスタンス」に固執していると、何も始まりません。
結局、多様な意見を聞きながらパラレルにプロトタイプを作って確認していくFileMaker Proがお得意のスタイルで進め、かかった期間は摺合せ期間が半年、実作業期間が2か月、サーバーの準備などなにやらで2か月ほど、トータル10か月ほどのプロジェクトになりました。

FileMaker上の作業として一番難しかったのは、ログインユーザーの権限管理でした。

つまり、たとえば

患者A-----担当主治医-----患者B
患者A-----担当看護師
患者A-----担当歯科医
患者A-----担当薬剤師
患者A-----担当介護師-----患者B

という形なら、患者Aの情報は主治医・看護師・歯科医・薬剤師・介護士の5人の担当者すべてが閲覧可能ですが編集権限はそれぞれの担当ページに限られる。患者Bの情報は主治医と介護士だけに権限が付与される。
さらに担当者全てが閲覧・編集できる患者基本情報のページがあるなど、ページ毎の権限管理に知恵を使わないと不可能なシステムでした。
しかしそのような権限関係をシステム管理者が一括管理していたのでは、システムは硬直的なものになりかねません。

自分の権限範囲を、各ユーザーに適宜設定させたり変更させたりするにはどうしたらいいのか。
必要に応じて、双方向で権限を与えあい連携を具体的に進めていくにはどうしたらいいのか、などユーザー権限を自律的にコントロールする仕組みを設計することがこのシステムの肝だったと思います。

おそらく、「まず厳密に要件を定義して」というスタンスでは堂々巡りの袋小路に陥り、抜け出せなくなったのではないかと思います。
FileMakerでアジャイルにトライアンドエラーを繰り返すスタイルが良かったのでないかと思います。

このシステムは、ホスピタルショーだけではなく弊社内の展示にて随時お試しいただくことができます。

ご関心のある方は、ぜひコワーキングスペース「Somethin’ Else」までお越し下さい。

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