「勝てば官軍」考
日曜日の8時はいつも「新撰組」を見る。まだ10代前半の娘たちも、なぜかファンである。
歴史が好きだとか、人間のドラマに興味が引かれるとかではなく、斎藤一というニヒルな隊士がかっこいいので見ているのだそうだ。
鳥羽伏見の戦いに敗れ江戸に戻った新撰組は、甲府で官軍を迎え撃つことを命じられる。
暴れん坊集団が江戸にいては、江戸の町が戦渦に巻き込まれることになる。
すでに敗勢にあることを認識していた幕府が、厄介者たちを追い払うために甲府行きを命じたのだ。
近藤勇にこの命令を言い渡す勝海舟は、とても小憎らしい姑息な役柄として描かれていた。
甲府で官軍の圧倒的軍勢にたちまちやられてしまった新撰組は流山に追われ、近藤勇は捕縛され土方歳三らは北海道まで落ち延びていく。
戦いの歴史は、どちら側から描くかで180度違ったものになる。
三谷幸喜さんの脚本では、会津藩主や新撰組の誠実な人間性や葛藤が強調されている。
これまで坂本竜馬や高杉晋作など、旧体制を壊す側を英雄として描いた小説やマンガばかり読んできたので、逆の側から見る歴史がとてもおもしろい。
官軍側から描かれた歴史が唯一の歴史ではない、という当たり前のことを改めて感じる。